第3章 まるで恋愛ゲームのような、
──おおきくなったら、おれのおよめさんになって。
──うん、ええよ。やくそく、ね。
まるで恋愛ゲームの幼馴染ルートの回想シーンみたいな、そんな会話も出会ったばかりの頃はしていたかもしれない。
彼と出会ったのは、幼稚園の頃。「何の動物が好き?」保母さんにそう聞かれて、元気いっぱい「カニさん!」と答えるような面白い男の子だった。
当時はたぶん、名前を知っているくらいで、まだそこまで仲良くなかったと思う。幼過ぎて、あまり覚えてないだけかも。
小学生の頃の記憶なら、しっかり覚えている。一年生の頃から同じクラスで、偶然、席替えで隣の席になった。よく遊ぶようになったきっかけは、同じゲームが好きだったから。
どのキャラクターが好きか、いちばん面白かった話は何か、次の新作が楽しみだ、そんな話でいつも盛り上がっていた。お互いの家を毎日のように行き来して、どんなゲームもいっしょに遊んでいた。学校の長期休みにはお泊りも頻繁にして、同じお布団で仲良く眠ることもあった。性別なんて気にしていなかった。
中学生になると、彼は私を少しだけ避けるようになった。女の子の私より、他の男の子友達とばかり遊ぶようになって、今思えばこれが思春期というやつだけど、当時の私には避けられる理由が全くわからなくて、きっと彼に嫌われてしまったんだと思った。私も彼に遠慮をして、距離を取るようになった。いっしょにゲームをして遊ぶことも、そのうち無くなった。とても、とても、寂しかった。
中学三年生になった時、私の引越しが決まった。両親が、離婚をした。母親が浮気をしていたのだ。今時珍しくも無い話だ。私は父親に着いて行くことを決めて、父親の仕事の都合もあって京都から東京へ引っ越すことになった。卒業までは京都の中学校に通いたいと頼み込んだけれど、結局、馴れ親しんだ故郷を離れることに変わりはない。
仕方ないことだ。悲しいのは、仲の良かった筈の彼と仲直りも出来ず別れてしまうこと。寂しいのは、きっともう彼に会うこともないのだろうということ。