第8章 嫉妬も愛情表現です
不審なまでに辺りをきょろきょろ見渡して、偶然にも周りに通行人が誰もいなかった事を安堵する。また同時に顔を見交わして、えへへ、と照れながら笑い合った。
「よかった。最近の菜花ちゃんって昔に比べたら、全然ヤキモチ妬いてくれへんようなったなあ、とか思ってたから。なんや嬉しくなってもうたわ。
ほら、目の前でギャルゲーやってても平気な顔で見てるやんか、まあ、それはそれでいっしょにゲーム楽しめてええけど、ちょっとだけ寂しく思っててさ」
「ああ、それは──学生の頃と違って、二次元と三次元の区別が付くようになっただけ、ですよ。ゲームの世界の彼女たちは、ゲームの中の主人公と恋愛をしているだけ。どう足掻いたって現実の春人くんには手出し出来ませんでしょう。逆も然り。そう思えば、可愛いものかなあ、って」
「なるほど、そりゃごもっともやな」
「あと、ストーリーとか結構面白くて、意外に私も見てて引き込まれちゃうんですよね……」
「わかる。そや、今度いっしょに乙女ゲーとかやってみる? 実は前々からやりたかった作品があってなー、この間実況したやつの続編なんやけど」
「わ、良いですね! 面白そうっ」
そんないつも通りの他愛ない会話を繰り広げながら、片手にゲーセン帰りの重たい袋を持ち直して、再び彼女と手を繋いで歩き出した。
「今日もありがとうね、菜花ちゃん。ほんま助かりました」
「少しお節介が過ぎたかなあ、と思ってたんだけど、春人くんの助けになれたのなら、良かった。またカメラマンに困った時は、私で良ければいつでも頼ってください」
「えっ、良いの!? じゃあ、俺の幼馴染み兼恋人兼専属カメラマンとして、今後とも、よろしくお願いします!」
「わあっ、三つも掛け持ちかあ。ふふ、頑張ります」
いつか四つ目を──俺の妻という役目も掛け持ちしてほしい。
それはもう少し先の話になりそうだけど、でも、あまり遠くない未来にしよう。
俺は心の底で密かにそう誓うのだった。
-了-