第7章 やきもちの本音
ぴろん、と携帯電話が軽快な短い音を鳴らしたことで、私はハッと現実に引き戻された。
久しぶりに夢中でお絵描きしていたら、すっかり時間を忘れていたらしい。目の前の色鮮やかなキャンパスにもう少し手を加えたいところではあるけれど、時計の針はもうすぐ天辺を指しそうだった。
私は大きな欠伸を零しながら筆を置き、椅子に座ったまま、うーんと背伸びした。そろそろ寝ようかな、そう思いながら携帯電話を見る。
『ハナさん、まだ起きてる?』
さっきの通知音は、キヨくんからのそんなメッセージを知らせる音だった。
どうしたんだろう。今日の彼はルトくんや牛沢さんたちと、ある動画サイトの生放送イベントにお呼ばれして、今頃楽しく皆で打ち上げでもしているのだろうと思っていた。私も生放送はしっかり視聴者として楽しませてもらいましたよ。
不思議に思いながら『起きてますよ。生放送お疲れ様でした』と可愛い猫のスタンプ付きで返事をしたら、すぐにキヨくんから電話が掛かってきた。私はびっくりして慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、」
『ハナさん大変なんだ、助けてくれ』
「えっ!? な、なに、どうし、」
『──レトさんがお酒、飲んじゃった』