第5章 幸せなおふたりさん
「……なあんてことも過去あったんすよっ、ハナさん。あの野郎やばいですよ。色んなヤンデレ女をゲームで攻略して怖い怖い言ってますけど、ヤツこそ恐ろしい真のヤンデレ男ですよ。早く俺に乗り換えることをオススメします」
「ふふ、ルトさんは意外とヤキモチ妬きさんですからね」
久々に遊びに来たレトさんの家でテンション上がって酒も飲んでる俺は、彼女を紹介してもらった日のことをふと思い出して、懐かしい話をして二人で盛り上がっていた。
あれから数年経っても俺は相変わらずゲーム実況してるし、レトさんとくだらないラジオを続けているし、彼女の手料理をよくご馳走になっている。
初めてお会いした時はお互い緊張しまくってたけど、春野さんの名前から取って"ハナさん"と呼べるほどの仲にもなった。
「何年前の話してんの、キヨくん」
「あ、出たなヤンデレ蟹男」
「病んでへんわアホ」
トイレからモソモソ戻ってきたレトさんは、俺の背中に軽く膝蹴りを食らわせてから、彼女の隣にストンと座り込む。
なるほど、この人も相変わらず彼女が大好きな、ヤキモチ妬きさん♡ らしい。俺と彼女が二人だけで盛り上がっていたのが気に食わないのか、ムスッとした顔で彼女の腕にぴったり身を寄せてくっついている。俺を睨むその顔は、これは私のものです、と言わんばかりだ。
ケラケラ笑いながら「男の嫉妬は見苦しいぜ〜」と揶揄えば、ビュンッと先日ゲーセンで取ったばかりのぬいぐるみが顔面に飛んできた。意外と痛え!
「もお、ルトくん、くっつき過ぎです。キヨくんの前で恥ずかしいよ」
「ええでしょー、別に」
いつぞや、人前でイチャつくカップルとかありえへんわー、みたいなこと言ってた気がするけど。俺の記憶違いだろうか。
まあ、数年このふたりのラブラブっぷりを見せ付けられている俺からしたら、もはや慣れたものである。
そもそも、こんな幸せそうなふたりを邪魔する趣味なんて、俺には無いんで。
「あ、そうだ、そろそろお夕飯にしましょうか。キヨくんも食べていきます、よね?」
「食べます、食べまーっす!」
「良かった。今日はハンバーグですよ〜、チーズも乗っけてあげるね」
「ぃやったぁー!!」
「めっちゃ子供みたいにはしゃぐやん」
今日もハナさんの美味しいご飯が食べられたら、俺も幸せだー!
-了-