第5章 幸せなおふたりさん
「……え、なに? キヨくんも緊張してんの?」
気持ち悪、とますますレトさんからドン引きされているが、この状況であがらない方が可笑しいからね?
動画ではハチャメチャやってるイメージ強いだろうけど、元々は割と真面目で根暗なんだよ、ちくしょー。
「あっ、そうだ、キヨさん。お昼ご飯はもう食べられました?」
「や、まだですけど、コンビニで買って来たんで大丈夫っす」
食い物しか詰まってないビニール袋を掲げて見せると、彼女は何故か嬉しそうに目を三日月にして微笑んだ。
「あ、そうなんですね。私たちもまだ食べていないので、まずはいっしょにお昼にしませんか? 昨夜の残りの肉じゃがと、お味噌汁もあるので、良かったら……あっ、ごめんなさい。お弁当があるのに、さすがにそこまでは食べられません、ね?」
なん、だと。まさか、手料理!?
今度はシュンと肩を落として苦笑した彼女に、俺は「食べます」と即答した。
「すげえお腹減ってるんでいくらでも入ると思います、大丈夫です」
「キヨくん、結構量食うもんなあ」
菜花ちゃんの肉じゃが、美味しいから期待してええよ〜! なんて、にこにこ自慢気に笑うレトさんを俺は心の底から憎たらし──羨ましく思った。
じゃあ準備してきますね、と居間を出て台所へ向かった春野さんを見送り、俺はレトさんとこの後動画を撮る準備を始める。ゲームの本体をテレビと繋げる作業をしながら、何気なく気になっていたことを彼に聞いてみた。
「レトさん、レトさん」
「はいはい」
「何でさー、俺に今更彼女を紹介してくれたんだよ?」
「えぇ? だってキヨくん事ある毎に紹介しろ紹介しろって、喧しいんやもん。今日は偶然お互いの予定が空いてたし、菜花ちゃんも遠慮はしてたけど前からキヨくんのファンで会ってみたかったらしいし、丁度ええかと思って、紹介した。それだけだよ」
レトさんはパソコンに向かって俺の方を一切見ずにそう答えた。