第2章 再開
「聞かせて」
タクミのこの言葉から周りは黙った。タクミとレイラとは小学生からの付き合いだったマリエ。ナオキとは中学校で知り合った。レンとは高校の時にブルートというバンドで知り合った。
そんな友達に黙って突然東京へ引っ越し、マリエの母親のように女優としてテレビに突然現れた彼女。裏切った、ともレイラたちからすれば言えるのかもしれない。
「うん、話すよ。先に電話とかメールありがとう。ごめんなさい無視しちゃって…嬉しかったんだけど、返事できなかった。
あの私が突然引っ越した少し前になんだけど、母がオーディションに出てみないかって、声かけてくれたの。連絡はしていたけれど、そんなこと言ってくれたの初めてで、私に手を差し伸べてくれる人がいたんだって、嬉しかった」
(祖母や祖父はただただ愛を与えてくれる人で、私がその時向けて欲しかったものをくれたのは母だった。
私にできること、私を必要としてくれること、私じゃなきゃダメなこと、そんなことを求めていた。
そして現実からも逃げたかった)
「土日でオーディション受けたら、すぐ採用してもらえて、そのまま母のところに引っ越したの。今もお部屋もらってそこでくらしているの」
「すげーじゃん!えーー教えてくれてたらめっちゃ応援して見送ったのに!!」
ナオキは純粋に驚いて喜んでくれていたが、恐る恐るとタクミの様子をみたマリエにはタクミの考えていることなんてわからなかった。レイラもレンと一緒にそうだったんだー、と目をキラキラさせている。
「タクミ…?」
「いや、感心したっていうか、俺もお前がテレビに出た時はビビったけど、トラネスをやっぱ東京進出させる思いを強めてくれたよ。負けてらんねぇって」
「え、マリエとライバルなの!?」
「私は歌わないよ!?」
「そういや、マリエの歌ってヤバいよな・・・」
「な、ナオキ!!!」
レイラもそう言えばと顔を青ざめてマリエのことを見る。タクミも可哀想なものをみるように彼女を見つめた。
「え、マリエがなんかあんの」
「レンは知らなくていいからっ!ホントだめ!!」