第1章 あの日。
だいぶ温まった彼から離れて外に出た。
「先に出るね」
「うん」
名残惜しそうに見詰めてくる彼の瞳から
何故だがそっと逃げるようにしてお風呂から出た。
彼の中できっと、晃一くんの存在がどんだけ大きかったのか。
私には想像がつかないくらいだった。
分かっている、自分とメンバー一緒にしちゃいけないことくらい。
私とメンバーは違う存在なことくらい。
分かっている。
だけど、佑亮の中でずっと輝いている彼らが私は羨ましくて仕方がなかった。
きっと、佑亮に言ったら 君が一番 だって言ってくれるだろうし、彼女である私とメンバーを一緒にするなんて全然お門違いだけど。
それでも、やっぱり佑亮の中で輝いていたいし、特別な存在でいたかった。
部屋着に着替えて、ソファーでぼーっとしていると、お風呂から出てきた佑亮が私の隣に座った。
ポスっと、ソファーに体を沈め、そのまま私の方に倒れこんできた。
「なんで、僕から逃げようとしたの?」
バレてたなあ、私が佑亮の瞳から逃げようとしたの。
「・・・。晃一の事。私佑亮が思っている以上に酷いこと考えてたから。苦しくなって。」
「・・・、そっか。僕も泣いちゃってごめんね。」
涙で赤くなっている瞳と瞼。きっとたくさん彼なりに考えていろいろ悩んで帰ってきたと言うのに。
なんで私はそんな彼のことを全て受け止めてあげれないのだろう。
「朱里ちゃん、今自分の事責めてたでしょ。」
「・・!そんなこと。。」
「知ってるよ、朱里ちゃんの癖。僕は知ってる。」
全部、佑亮にはバレてるんだ。
「・・私、晃一の事、裏切り者だって・・・。思っちゃって。辛くて。佑亮の事こんなに泣かすのも、ドームまでの事も。全部全部。何も分からない私がこんなこというのはダメだってわかってるのに。・・・ごめんね。本当に。ごめんね」
無言で、聞いてくれた。
私が話してる途中に泣いた中で、彼はずっと私の背中を撫でてくれた。
一番つらいのはメンバーである、佑亮なのに。
それでも、彼は静かに
私の傍にいてくれた。