第1章 あの日。
「朱里ちゃん、一緒にお風呂。入ろう・・?」
彼からくることは滅多になかった。
かと言って私からもなかった
でも、どこかお互いが求めている時を感じ取ってた。
言葉を使わなくても、自然となっていた。
でも、彼が言葉で伝えてきた。
それが、嬉しい反面なんだか寂しかった。
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先に私が湯船に浸かっていた。
なんだか、私の方が頭の整理が出来なくて、すうっと湯船に沈んだ。
目を閉じて、お湯が拾う音だけに耳を傾けて。
佑亮の笑顔、佑亮が私に言ってくれた言葉。
そして、楽しそうにライブをしている姿。メンバーの話をしている佑亮はどんなときよりも楽しそうで。
私はいつしかそんなメンバーにさえも嫉妬していたなあ。
急に、肩を持たれて水面に上げられた。
「朱里ちゃん!?何してるの!!!」
「佑亮の事考えてた・・。」
へへと笑ってみせた。心配してた顔が自然とほころんでた。
「風邪、ひくよ。早く湯船入りな?」
「うん、ありがとね。」
私が湯船を譲ろうと出ようとしたときに、佑亮に抑えられた。
「なんで、出てくの。一緒に入るの。」
「今日は甘えん坊だね、よしよし、甘えていいよ」
私にはこれくらいしかできないから。
佑亮が悲しんで、何か私にしかできない事を求めているのなら
それは答えてあげたい。
「うん、朱里ちゃんまでいなくならないで。」
そういって、まだ温まってない体を私で温まるかのように
ぎゅっと強く抱き寄せてきた。
ごつごつしていて、筋肉質で。男の体なのに、
こんなにも、繊細で儚げなんだ。彼は。
今にも壊れてしまいそうな彼を私はただただ受け止めてあげるしかできない。
「私はいつまでも、佑亮の傍にいるよ。安心して」
そういって、回してきてる彼の腕にキスをした。
そっと、壊れないように。優しく。
まるで、ガラス細工を扱うように。