第1章 あの日。
あの日、丁度東京は雨だった。
前の日は凄く綺麗な青空を覗かしていたのに、
それが嘘のように土砂降りの雨が降った。
、、、その日彼は連絡してくれた時間よりも遅くに帰宅した。
玄関の開く音、いつもは元気よく゛ただいま“という彼の声が
どんだけ待っても聞こえない。
「佑亮、風邪。ひくよ? 早くこっちおいで?」
遠くから呼びかけた私の声にも反応がなく、少しだけ聞こえた
鼻をすする音。
嫌な予感がした。いつも彼が泣くときにする音。
急いで、玄関に向かった。
そこには、玄関でびしょ濡れになった佑亮の姿があった。
俯いて、鼻をすする音。
「どうしたの?」
恐る恐る聞いてみた。
「・・が・・・いし・・・て」
途切れ途切れに聞こえる佑亮の声。
「・・・ん?、」
ハテナマークを浮かべながら、顔を覗き込むと泣いてぐしゃぐしゃの顔をしながら
「こーちゃんが、脱退するって」
確かに聞こえたその言葉に私は戸惑いを覚えた。
色んな感情が私の中を巡る。
そんな中一つの感情が私の中で大きくなっていった。
〈みんなを裏切る、裏切り者・・・〉
こんな事、晃一くんに思ったこと初めてで、こんなこと思いたくなくて。
でも確かに私は思っていたことで。
静かに、泣く佑亮くんに私は何もしてあげられなくて。
ただただそっと、彼に寄り添って抱き締めてあげることしかできなかった。