第9章 マテールの亡霊④
二人からはなれてトマのほうへとむかう。
トマの手から出てきたのは粉々の破片になってしまったティムキャンピー。しかし、その破片が自然と浮き上がり元の姿を取り戻してゆく。
「お前が見たアクマの情報を見せてくれ。ティム」
完全に再生すると、中心にある十字模様のところから横一線に口が開き、そこからギザギザの歯が覗く。
そして映し出されたのはアレンがレベル2と戦っていた記録だった。
地下へ移動しながら映像を確認する。
「鏡のようだ…」
ふと神田が呟いた。
「はい?」
「左右が逆になってるのよ。このアクマ」
「見てみろ。奴がモヤシに化けた時の姿…服とか武器とか…左右逆になってる」
「モヤシ?」
(あれ…?)
天音はトマの反応に微かな違和感を覚えた。移動中にも何度かアレンのことを”モヤシ”と読んでいたのだ。今呼び方に疑問を持つのはおかしくないだろうか?
(まさか…ね)
「あいつのことだ。ほら、切られた偽物もよく見ると逆だ」
「しかも偽物は中身がカラで360度外見だけのものみたいだし…。ただ単に「化ける」能力じゃないわね」
「ああ。こいつは何かで対象物を写し取ってる…と言うべきか。しかも、写し取ったそれを装備することでその能力を自分のモノにできるようだ」
「アレンの左腕を変形させて攻撃しているところを見るとね…」
「厄介なモンとられやがって。あいつ…」
二人して頭を抱える神田と天音。
すると、一緒に見ていたトマが気落ちした様子で言った。
「ウォーカー殿を探すべきでございました。もし、ウォーカー殿が生きていても現れた時本物かどうか分からないです…」
「それは大丈夫だろ。左右逆になってるんだからすぐにわかる」
「もしそんな姿でノコノコ現れたらよほどの馬鹿よね」