第9章 マテールの亡霊④
トマとの通信を終え、ゴーレムを彼の元へ向かわせる。
「さて。それじゃ地下に入るが道は知ってるんだろうな?」
「知って…いる」
「グゾル…」
「私は…ここに500年いる。知らぬ道はない」
グゾルはそう言いながら、被っていた帽子を取る。
「!」
帽子の下からは皮膚が赤黒く変色した醜い顔が出てきた。再び帽子をかぶって口を開いた。
「クク…醜いだろう…」
「お前が人形か?話せるとは驚きだな」
(いや…違うわね。人形が造られた理由からして彼が人形というのは考えにくい)
しかし、天音は思った事を神田に言おうか迷ったが確信がある訳では無い。それにグゾルが嘘をつく理由もわかっていないのだ。ハッキリとした判断はしかねる為、神田には伝えないことにした。
「そうだ…お前達は私の心臓を奪いに来たのだろう」
「出来れば今すぐ頂きたい」
神田の申し出にララとグゾルはハッとした表情になる。
「デカイ人形のまま運ぶのは手間がかかる」
「ち、地下の道はグゾルしか知らない!グゾルがいないと迷うだけだよ!」
必死になって止めるララだが、神田は一切動じずに彼女へ逆に問いかけた。
「お前は何なんだ?」
「私は…グゾルの…」
ギクリとした表情を浮かべ先程の勢いが弱まる。そんなララへグゾルが助け舟を出した。
「人間に捨てられた子供…だ!ゲホッ…私が…拾ったから側に…置いでいだ…!!」
「グ、グゾル…」
急に大声を出した所為でグゾルが咳き込む。
(…やっぱり可笑しいわ。人形がこんなふうに咳込むだなんて)
と、その時トマが着き声をかけてきた。
「悪いがこちらも引き下がれん。あのアクマにお前の心臓を奪われるワケにはいかないんだ。今はいいが、最後には必ず心臓をもらう」