第7章 マテールの亡霊②
「六幻。災厄招来!界蟲一幻!」
六幻の軌跡から界蟲たちが放たれ、レベル1のアクマは次々と大きな爆発音を轟かせて破壊されていく。
「あーっ!!?もう一匹いた!」
神田が六幻を背の鞘に戻し、先程頭を潰されかけた探索部隊の近くに跪いた。
「おい。あの結界装置の解除コードは何だ?」
「き…来てくれたのか……エクソシス…ト」
「早く答えろ。部隊の死をムダにしたくないのならな」
「は…Have a hope "希望を…持て…"だ!」
瀕死だった探索部隊はとうとう事切れたようだ。
神田が先に結界の方へいっていた天音に解除コードを伝え、結界を解除させた。
「来い」
天音が少女を、神田が老人をそれぞれに抱え、壁を蹴って再び廃屋の上に移動した。
「手荒になってごめんなさいねお嬢さん」
「いえ…」
無事対象を救出した二人を見るアレン。
「助けないぜ。感情で動いたお前が悪いんだからな。ひとりでなんとかしな」
「私もイノセンスを優先させてもらうわ」
「いいよ置いてって。イノセンスがキミたちの元にあるのなら安心です。僕はこのアクマを破壊してから行きます」
神田はアレンを一瞥し、その場を去った。
「…どんな能力を有してるか分からないから油断しちゃダメよ」
それだけ言い残して天音もまた神田を追って駆けていった。
そしてそれを合図に両者が同時に地を蹴って戦闘が再開された。
アレンがレベル2へ攻撃を繰り出し、その身体を引き裂いた。
――引き裂いた、はずだった。
(違う!これはアクマじゃない。ニセモノ!?)
引き裂いた対象は、その魂を映すはずの左目が反応していなかったのだ。
「ここ、ここ」
アレンの体が背後から何者かに抱きしめられる。
振り返ったアレンの視界に映ったのは――…
"もう一人のアレン"だった。