第5章 任務同行
一方、天音達が教団をあとにした時間と同時刻の南イタリア"マテールの地"。
マテールのとある一角では、探索部隊が三体のアクマを捕らえていた。三体のうち中央で捕えられているアクマは他二体と比べてフォルムが丸く、本来大砲が突き出しているはずの場所には二重丸の様な模様が浮き出ていた。
探索部隊の隊長と思われる男が中央のアクマを見て「大分人を殺している」と零した。
しかし、球体のアクマは一重の結界では足りなかったようで、結界を破って隊長の隣にいた隊員を撃ち抜いた。
「!!」
そして。
――ヒャヒャ
――ヒャヒャヒャヒャ!!
『私はアクマ!!』
突如、中央で捕えていた球体のアクマに異変が起こった。
ボコボコと不快な音をたて、結界の仲いっぱいに広がってゆく。はっとし、隊長はすぐに指示を飛ばす。
「ヤバイ…退避しろ!コイツ進化するぞ!!」
アクマの皮膚がピシリと割れていき、そこから何かが"出てきた"。
――私はアクマ。ダークマターから生まれた新たな自我!
――育くんでくれてどうもありがとう…
「レベルアップだー」
球体から出てきたのは進化したアクマ。レベル2だった。
マテールの別所にて「人形」を護っている探索部隊は通信機の向こう側から聞こえた仲間たちの断末魔で彼らの死を悟った。
「耐えろ。もうすぐエクソシストが来てくれる」
通信機が壊れてしまったらしく、砂音だけが流れる通信機を苦々しげに見つめる。
「それまでこのイノセンスは絶対守るんだ」
そういう彼らのそばには、薄汚れてボロボロの布を纏った1人の老人と、まだ幼さの残る一人の少女が互いに寄り添っていた。
‡続く‡