第4章 イノセンス
「ちなみにヘブラスカもエクソシストのひとりだよ」
コムイの発言に驚きヘブラスカを見上げるアレン。
まぁ、そりゃ驚くよね。風貌がだいぶ私達とは違うし。
「お前達と…タイプは大分違うが…私は例の石箱の適合者として…教団の創設時からずっといる…イノセンスの番人だ…。沢山の…エクソシストと出会ってきた…。アレン…お前に、神の加護があらんことを…」
そしてコムイとアレンを先に返し、再びヘブラスカと向き合う天音。
「天音…その後変化はないか…?」
「うん。へーきよ」
「そうか…。今はまだ…単にその心臓に宿っているだけ…か…」
言いながらヘブラスカの触手のような髪が優しく天音の体を持ち上げた。
両親を失い、黒の教団で適合イノセンスがないか調べられた時に知った"心臓に宿ったイノセンス"。適合者になっていたのかと思ったものの、シンクロ率を調べても0%だった。シンクロした形跡もなく、本当にただ"宿っているだけ"だったのだ。
「でも一度死にかけた私をこのイノセンスがそれを補っていたなんて…知った時は驚いたわ」
「そう、だな…。……イノセンスにも…異変はない。何かあればすぐに言うんだぞ…」
「了解りょーかい!またね、ヘブラスカ」
「嗚呼…また…」
そしてヘブラスカの間をあとにし、八つ当たりという名の鍛錬の相手をするべく神田を探しに歩き出した。
「いてて…。神田ってば本当に容赦なしよねぇ」
あのあと、本当に夕飯の後も鍛錬に付き合わされ痣やかすり傷はいつもより多くなっていた。
(それはそうと…)
「レン」
自室のどこに向けてでもなく一言呼ぶと、ベッドの下から銀色のティムキャンピーがふよふよと羽ばたいてきた。
「レン、あいつに繋いで」
すると少しの沈黙の後、ザザッという雑音がして目的の相手へと通信が繋がった。
『ザザ…天音か。どうした』
「どうした、じゃないわよ。あの子…例の子でしょう?」
『あ?何の事だ』
「私が気づかないとでも?」
『…悪い。だがこれを任せられるのもお前だけだ』
「はぁ…やれるだけやるわ」
そして通信を切り、ベッドに潜り込む。
今後への不安を胸に抱き、天音は微睡みの中へ意識を落としていった。