第7章 冥土カフェへようこそ【トド松】
「ご主人様ぁ、今日は何にしますか〜?」
桜ちゃんがメニューを持ってくる。
「じゃあ、今日は桜ちゃんをいただこうかなっ」
「もぉ〜! それはダ・メですぅ!」
セクハラオヤジ並の発言にも嬉しそうに返してくれる桜ちゃん。もう、キュンキュンが止まらない。
「じゃあ、今日はイチゴショートにしよっかな〜」
「はいっ! イチゴショートですねっ!」
「おまじないもしてくれる?」
「もちろんですぅ! ご主人様がおいしく食べられるように桜の心をいーっぱい込めて、おまじないかけますねっ」
生前、メイドカフェにハマる人たちを理解できないと思っていたけど、今なら彼らの気持ちがよく分かる。すごくイイ。この特別に扱ってもらえる感がたまらない。
厨房へと消えていく桜ちゃんの後ろ姿を眺めながら、ボクはソファに寄りかかった。
桜ちゃんと会うようになってからは、どんなに辛い地獄も耐えられるようになってきた。今のボクにとって、彼女は心の拠り所。もう、桜ちゃんなしでは生きられない。……ま、死んでるけど。
「あ〜、落ち着く……」
ボクはそっと目を閉じた。
その時、カランコロンと可愛らしい音が響き、ドアが開いた。
ハッと目を開ける。
「こんにちは〜! おーい、桜ちゃ〜ん!」
入り口に鬼が立っている。ヤバイ。客が来た。
ボクは素早くテーブルの下に隠れた。
桜ちゃんが慌てて厨房から走ってくる。ちらりとこちらに目をやり、テーブルの下にボクが隠れているのを確認すると鬼の元に駆けつけた。