第7章 冥土カフェへようこそ【トド松】
「えっ……新しい白装束?」
「この場所はよく死者が逃げ込んでくるから、その人たちのために用意してあるんですよ〜。本当はだめなんだけど、苦しんでる人たちを目の前にして放ってはおけないですからっ」
ボクはもう一度店内を見回した。きれいな店ではあるが、繁盛している雰囲気はない。
「ねぇ、桜ちゃん。もしかして、このカフェって従業員は桜ちゃんだけなの?」
桜ちゃんは屈託のない笑顔で答える。
「そうですぅ。前はもっとメイドさんがいたんですけど、不況で流行らないのでクビになっちゃいました。今は桜だけがお店をやっていて、たまにオーナーさんが様子を見に来ます〜」
「そうなんだ……。頑張ってるんだね……すごいよ……」
生前ニートだったことが恥ずかしくなってくる。地獄でもこんな女の子が一人で頑張ってるのに。
「すごくなんてないですよ〜。桜は、お客様に幸せになってもらいたいから続けてるだけですっ」
晴々とした笑顔が眩しい。
ボクは立ち上がった。
「桜ちゃん、ありがと。ボクやっぱり戻るよ。頑張る」
「え? いいんですかぁ? もっとゆっくりしていけばいいのにぃ」
ボクは首を振った。
「大丈夫。あのね、ボク、トド松って言うんだ。トッティって呼ばれてる。またこっそり会いに来てもいいかな?」
桜ちゃんの顔がパッと明るくなる。
「もちろんですぅ! いつでも来てくださーぃ!」