第7章 冥土カフェへようこそ【トド松】
桜ちゃんは、指でハートマークを作った。
「おいしくなぁれ! おいしくなぁれ! 地獄で死者をイジメまくって、バキバキバッキューン! モエモエのキューン♡」
コーヒーとバウムクーヘンに向かってハートを振る。
「……はい、おいしくなりましたぁ!」
「途中、何か嫌なフレーズが入ってたけど!?」
「だって、ここ地獄ですも〜ん。このお店もお客様はみんな鬼さんなんですぅ。死者を入れたのは内緒ですよぉ。バレたら、桜はクビになっちゃいますぅ」
そうなんだ……。ボクはコーヒーを一口飲んだ。
「あ……!? おいしい……!」
温かい飲み物が胃に染み渡る久しぶりの感覚。鼻と口の中に広がる香ばしい香り。自然と身体から力が抜ける。ボクは、ホッと大きく息を吐いた。
「ふふっ、とても美味しそうに飲んでくれるんですね〜よかったぁ」
顔を上げると、満面の笑みでボクを覗き込む桜ちゃん。その顔は本当に幸せそうで、心の底から喜んでくれているのが伝わってきた。
喋り方はちょっとアレだけど、桜ちゃんって素直でいい子じゃん……。地獄に来てから久しぶりに誰かに優しくしてもらった気がする。少しジンと胸が熱くなった。
「桜ちゃん、ありがとう……」
「よかったらシャワーも浴びていきますかぁ? 従業員用のシャワー室が奥にあるので使っていいですよ〜。白装束も新しいのありますよ? さっぱりすると思いますぅ」