第7章 冥土カフェへようこそ【トド松】
店内に入ると、桜ちゃんはボクをソファ席へと案内した。
「では、ご主人様。とりあえず、そこに座ってくださーい。何か食べ物と飲み物を持ってきますねっ!」
やっと少しゆっくりできそう……。ボクはホッとしながら、ソファに座り込んだ。改めて店内を見回すと、ボク以外に客は見当たらない。
疲れであまり考える気にもならず、ただ、ぼーっとしていると、桜ちゃんがプレートを持って歩いてきた。
「お待たせしました、ご主人様! 叫喚地獄の熱釜で煎れたコーヒーと焦熱地獄で焼いたバウムクーヘンで〜す!」
「は? な、何それ……」
「えー、だめですかぁ? うちの一番人気なんですよぉ? それにうちのお店のメニューは、体に優しい無農薬の自然素材を使っているので、人間の死者が食べたり飲んだりしても現世に戻れなくなる心配もありませんっ! 戻る気あるなら、ですけどねっ」
「あ、そ、そう……そういうものなの? よく分からないけど……ありがと……」
目の前に置かれたプレートを覗き込む。見た感じは普通のコーヒーとバウムクーヘンだ。
「えーっと、じゃあ、いただくね!」
地獄に来てから空腹を感じることもなかったが、食べ物を目の前にしたら途端にお腹が空いてきた。
早速フォークを持つと、桜ちゃんに「お待ちください、ご主人様!」と止められた。
「え? なに? だめだった?」
驚いてフォークを置く。
「まだ食べちゃだめです! おまじないをかけないと!」
大真面目に言う桜ちゃん。
「は? おまじない?」
「そうです! ご主人様に美味しく召し上がって頂くために、おまじないをかけます!」
「はぁ……じゃあ、お願いします……」