第1章 あの世であなたを脱がせたい【おそ松】
「いいよ、いいよ! 優しく脱がせてぇ♡ ってか、やらなきゃ、いつまで経ってもできるようになんないよ? 他の鬼に桜ちゃんが仕事してないって告げ口しちゃうけどいいの?」
「う……」
それは困る。というか、鬼を脅すなんて、バチ当たりな。
「大丈夫だって! 俺の言う通りやればいいからさ!」
「わ、分かりました……」
私は仕方なく頷いた。
この人、生前はどんな職についていたんだろう? でも、この様子ならきっちり仕事をしていた社会人に違いない。何事も経験者に教わるのが一番だよね? 私は彼に従うことにした。
おそ松さんが真面目な顔で私の手を取る。
「んじゃ、まずは俺の襟を持ってくれる?」
「は、はいっ!」
私はおそ松さんの白装束の襟に手をかけた。
「で、俺の耳に顔を近づける」
言われた通りにおそ松さんの耳に顔を近づける。
「近づけました」
「じゃあ、そこで『おねーさんがボクのお洋服を脱がせちゃうぞ♡』って耳元で言ってみようか」
……ん?
「あの……」
「どしたの? 早く言われた通りやって!」
「でも……マニュアルにはそんなこと……」
「新人は口答えしないっ!」
おそ松さんの強い語気に押され、慌てて私は彼の耳に口を近づけた。
「お……おねーさんがボクのお洋服を脱がせちゃうぞ……♡」
途端におそ松さんが「くぅー!!」と声を上げた。
「何か違いました?」
「違わない! いい! いいよぉ! たまんない! これは絶対言ったほうが死者も喜ぶから!」
「はぁ……」