第14章 黄×紫
松「…悪かったよ。気持ち悪いこと言って。今の、忘れてくれ」
二「…」
松「俺が、変なんだ。おまえは悪くない」
二「…潤だって悪くないよ」
松「いや、俺が悪かった。カズの気持ちなんて考えないで、俺、自分のだけ、押し付けて…」
二「…」
松「ホント、悪かった。もうしないから」
笑顔というには苦しいくらい弱弱しい笑みを落とし、背を向ける潤。
頑なな、背中。
いつの間にか、広くなったなぁ…。
ホントに、大人に、大人の男に、なっちゃったんだな…。
二「…潤って、俺の気持ち、ホントに考えてくれてないよね」
松「っ」
振り返った潤は、ショックを隠せない顔をしてた。眉間のしわを深く刻んだまま、切ない色で、後ろめたいような目で、俺を映した。
松「…だから、俺が悪かったって、言って――」
俺の手がその頬に触れるか触れないかのところで、彼は言葉を失った。正確には、唇をふさがれたことで、物理的に言葉を発せなくなっただけだけど。
…うん。
気持ちが、なんか。先走っちゃったのかな。俺も。
だって伸ばした手より先に
勝手に
キス、してたから。