第3章 『PV』って?
松「このPVって…プロモーションビデオじゃなく、もしかして、プライベートビデオの略…?」
櫻「や、プロモーションできるような内容でいいってことにしとこうぜ!なっ?」
そう願いたいよ。俺らだって。
他の選択肢もあった。だって具体的に「何を」っては書かれてないんだもん。てことはさ、他のことでもいいわけでしょ?この条件さえ満たせば。何か、健全な何かのスポーツで勝負とか?でもいいんじゃねえかなって。
なのに、もう俺らの頭はたぶん、見事に一色だった。ていうか、たぶん強迫観念みたいなものが勝手にあって。それ以外考えられなくなってたんだと思う。
スゲー休みもらえる!って喜んだのなんて幻かっつーくらい、よどみきった空気だった。要は一ヶ月の軟禁?って。撮らなきゃ出られないぞ、みたいな。もし撮らずにそのままスルーしたら、その後どうなるか――…。
その時の俺らには、想像ができなかった。
そして
その時の俺らに、やらない選択肢を選ぶ余地はなかった。
あ、今ならやんないよ。やんないでしょ。当たり前じゃん。つか帰ってるんじゃない?みんな。「何の冗談?」って。何ならマネージャー問い詰めるよ。何の目的なのか。本当に俺らに必要なものなのか。
やんなきゃダメだとしても、少なくとも、もっとうまくかわす技も、今ならいくつも持ってる。そもそも、誰かがヤダってなったらやんないし。
だからさ。
…若かったんだよ。レギュラーもやたら本数撮りだめてることに気付かないくらい、若かったんだよ。その理由も「改変期だから」ってな一言で納得しちゃうくらいに。
でもおかしいよね?だって考えてもみて。改変期って、スペシャルとかで時間まちまちになるような時期。でも、当時の俺らのレギュラー、他の番組のスペシャルに尺もってかれる事はあっても、逆はないんだよ。あるはずがない。ぶっちゃけそこまで売れてなかったから。
そうだな。スペシャルっつっても、逆の意味のが多かったくらいよ。『いかにお金をかけないか!』みたいなね。ただ寝る、みたいな(笑)。
ま、要するに。一ヶ月分の仕事前倒しでやっても悲鳴を上げないくらいの体力があったってことよ。うん。
若かったんだよっ!!!