第2章 【02】魔法の鏡は誰のもの?
その場に立ち尽くしていた氷雨はハッと気付いて慌てて彼の後を追う。その後ろにベルフェゴールが続いた。
「……」
「……」
「……」
三人とも見事に無言である。
何人かの隊員とすれ違いながら歩いた末に会議室へ到着すると、そこには他の幹部陣が既に揃っていた。
「あら、ベルちゃんまで連れてきたのー?」
「あー、うん……成り行きで?」
「放っておくと、また殺しに出掛けるだろうからなぁ」
「オレが外で何しようと勝手じゃん」
「そんなに殺しがしたけりゃ任務でやれぇ!」
「で、氷雨。任務の内容はどうなっているんだい?ランクは?」
「あ、えっとねー。今回はSランクだね」
殺気を飛ばしまくっているスクアーロとベルフェゴールにまったく興味がない様子でマーモンは氷雨に視線を向けた。マーモンの問いを受けて、彼女は手元の資料に目を落とすと表情を引き締める。
表情の変化とともに、彼女の声がワントーン低くなると他の幹部達も氷雨の話に耳を傾ける。
「依頼主はボートロファミリー、内容はファミリー内の反乱因子の一掃。あくまで内輪揉めとして片付けたいらしいから、うちが手を下したことは分からないようにするのが条件です」
「それ、めんどい」
「小細工ひとつで報酬が跳ね上がるなら僕は歓迎するよ」
「小細工分の追加報酬はちゃんと出まーす」
追加報酬の話が出たことで、心なしかマーモンの表情が明るくなったように思える。いつの間にか自分の席に腰を下ろしていたベルフェゴールは、テーブルの上で足を組んで暇そうにナイフを弄んでいる。
「任務決行は明日。反乱因子の秘密会議が夜に開かれるみたいだから、そこを狙います」
「場所はこっちで掴んでるぜぇ。あとは、」
「全員やっちゃえば終わりね~」
「う゛お゛ぉい!俺の台詞を取るなぁ!」
「あら!私ったら、うっかり!」
「いちおう、今日までに洗い出したターゲットの一覧を配っておくねー。はい」
「ヌ……ご苦労だ」
「オレいらねーんだけど。そこにいるやつ切り刻むだけだし」
「ベル、顔が判別できる程度にしなよね。あとで照合に困るんだ」
「ししっ、それは気分次第」
顔写真と名前が並ぶ重要資料は、ベルフェゴールの手によって紙飛行機に成り代わる。