第4章 (2)White cat
「猫?」
「にゃぁん…」
振り返ると綺麗な毛並みの白猫がそこにいたのだが…。
「えっ、君怪我してる!?」
その白猫は何かの事故に巻き込まれたのか、お腹や足から血が流れていた。
息も弱々しく今立っているのもやっとのようだった。
いきなりのことに頭がフリーズしかける。
「ダメだダメだ…なんとかしなきゃ…」
この子は首輪などもしておらず、野良猫のようだ。
このまま放っておけばきっと大量出血で取り返しがつかなくなる。
「どうしよう…なんとかしなきゃ…でも応急処置の仕方も分からない…」
こんなことは初めてで、早くどうにか助けたい気持ちとは裏腹にパニックに陥ってしまう。
そんな中、ついに白猫はついに力尽きゆっくりと地に倒れてしまった。
「ダメだ、考えてる時間もないッ」
この街に引っ越してきたばかりでどこに動物病院があるかも分からない。
電話でタクシーを呼ぼうと携帯を取り出すがここは山道。電波が繋がらない。
先程面接した会社ももう近くにはない。すでにかなり距離がある場所まで歩いていたからだ。
私は泣きそうになりながらも、持っていたタオルを猫を止血するように包み、優しく抱き抱え走り出した。
こうなったら電波が入るところまでいくか、誰か人を見つけて病院の場所を聞くしかない。
「助けるからね。もう少し頑張ってね」
こうしている間にも猫の呼吸はどんどん弱くなっていき、それに比例するように私の焦りは強くなる。
そんな中、少し先にようやく人の姿を見つけた。
私は無我夢中で、その人にこう叫んだ。
「助けてくださいッ!!」
振り返った目の間のその人は。
ど金髪、鋭い眼光に、ピアスにタトゥー…そして鍛え抜いたであろうムキムキの体。
「あ?」
普段の私には無縁の、厳つく怖いお兄さん。
あっ、これ、声かける人を間違えたやつかも。
ひえっと私から小さく声が漏れた。
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