第8章 (6)Hot & cold
「ろーるあいす?」
「知らないんですか?冷たい鉄板の上で伸ばしてくるくる巻いた、今話題のアイスですよ!」
そう言いながらすぐそこにあるロールアイス屋を指差す。
カラフルでポップなキャラが描かれたその店には、何人かの女の子たちが列を作っていた。
「いいぜ、その…なんとかアイス、買ってきてやるよ」
「ロールアイスです!…ってあ、待って!私も行きますー!」
スタスタと歩いていく桐嶋さんを追って私もお店に並ぶ。
店内には色とりどりのアイスやトッピングのサンプルが飾られており、見てるだけで幸せな気分にさせる。
「お前はこういうのが好きなのか?」
「はい!見た目も可愛くて、何より美味しそうじゃないですか!見てください、ここ好きなトッピング選べるみたいですよ」
「すげーな、いくつでも乗せていいやつか!?」
「それは分からないですけど…あ、次私たちの注文の番ですよ」
いろいろなフレーバーがあって悩むけど…桐嶋さんの負担にならないように、ここは定番でお手頃価格な…。
「すみません、このストロベリーのロールアイスお願いします」
「それにトッピング全部盛りで!」
「!?」
私が注文し終えようとした瞬間、桐嶋さんが横から訳の分からないことを言い出した。
「き、き、桐嶋さん!!何馬鹿なこと言ってるんですか!!」
「何って、お前も気になるだろ!全部盛り!」
「気になる気にならないの話ではなく……第一、誰がそんなに食べるんですか!せめて多くてもトッピング5種類までにしてください!」
「ちぇ…分かったよ。じゃあこれとこれと…」
私の必死の言葉に桐嶋さんも流石に折れてくれたようだ。
ひと安心…と思ったが、大騒ぎしたせいで他のお客さんの注目を浴びてしまったことに気がつく。
「あのカップルなんか可愛いね…」
「お笑いコンビみたい。でもああいうのなんか憧れるな…」
「彼氏さん怖いけど、でもよく見たらすごいかっこいい〜」
「透、ほらアイス買えたぞ。あっちで食おうぜ」
「…うん」
桐嶋さんから手渡されたアイスの温度とは対照的に私の体は火照りまくっていた。
恥ずかしさでアイス溶けそう…。
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