第6章 (4)Housemaid
桐嶋さんとのハプニングから数分後。
用意して貰ったサイズの合わない服に袖を通し、私は屋敷の皆さんが集まるリビングに来ていた。
…来ているのだが。
「(待って!?顔面偏差値の高さおかしくない!?)」
宮瀬さんや桐嶋さん、カナメくん、先程見かけた九条さん。そしてその他に見知らぬ黒髪の男性もそこにいたのだが…。
見た目の印象だけでもバラバラの個性を持つ5人に共通している点。それは……全員えげつなーーーーく顔が良い。
実は僕達アイドルグループなんですと言われても納得できる。
「透!!」
「!」
私がイケメンたちに圧倒されてる間に、桐嶋さんが驚くべき速さで私の目の前に現れる。
先程の出来事を思い出し少したじろいでしまうがそれ以上にあまりにも桐嶋さんが悲しい表情をするのが気になった。
「透……さっきは本当にすまねぇ…俺…」
そのガタイの良さから考えられないくらいのしょんぼりとした声で謝罪された。
眉毛は八の字に下がり、唇はきゅっと結ばれている。
まるで飼い主に怒られた大型犬のようだ。垂れ下がった耳と尻尾が見える…!
「そ、そんな謝らないでください!気が動転したとはいえ、私も恩人に酷いことをしてすみませんでした…」
「じゃあもう怒ってねぇのか?」
「はい、怒ってないですよ」
私がそう言うと桐嶋さんの表情がどんどん明るくなっていく。
あ、犬耳と尻尾が立ち上がった…。
「カナメー!!透許してくれたぞー!!」
「はいはい、良かったね。宏弥くんさっきまでお姉さんに絶対嫌われたってぶつぶつうるさかったし、こっちも助かるよ」
「ばっ、馬鹿野郎そんなことねぇし!透なら許してくれるって分かってたし!」
なんだが可愛い言い合いが聞こえる…。
桐嶋さんが犬ならカナメくんは猫だね………ってそうだこうしてる場合じゃなかった!
「あの、猫ちゃんはどうなりましたか!?」
「猫なら俺が治療した」
私の問いにそう答えたのは、私の知らない黒髪の男性だった。
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