第9章 梅雨入りの午後(東峰旭)
「………本当に…、すみませんでした」
「……いえ……」
さんは特に怒るということもなく、しれっと一言返した。
それは、あまりにもつまらなさそうだと思うくらいに。
「わ、私も、半分利用していたようなもので……」
「りよう…?」
「東峰先輩なら…助けてくれるって、思ってたんです」
さんは恥ずかしそうに顔を背けた。
「本当に助けてくれるなんて、思ってなかったですけど……」
「…っ」
そっと、掌を重ねてくれる。
憂いの顔も綺麗だけれど、嬉しそうな顔もすごく綺麗だった。
雨がまだ止まない。
ざーざーという落ち着く音が響き渡る。
今なら、言えると思う。
「いつでも、助けるよ。
好きだから」