第7章 常闇(黒尾鉄郎)
「はぁぁぁぁ!きもちいいよぉっ、あん…、も、もっとぉ…っ!」
緩みっぱなしの口から滴が垂れる。
「ひやぁぁ…っ!はぁ…!せんぱ、!せんぱぃい!!」
怖い。
ひたすらに身体を覆う暗い快楽の沼が私を待っているようで。
怖い。
この人が。
さっきまでの無機質さと、今の、本当に愛してくれていると錯覚までしてしまいそうな行為が。
「せんぱ、ぁ、こえ、こえすき……っ!
きかせえ、もっと、あっ、あっ…!」
「は変わった、こと、言うなぁ…」
「ぁぁぁぁっ!な、なまえ、はあっ、もっとお…っ!!」
優しい手付きで胸を触られながら、
髪を撫でられながら、まるで、本当の恋人のように、
「……」
優しく、甘く、呼ばれる。
天にも、のぼれそうで。
「いぁぁぁぁあああっ!!!」
きゅっと、全身にまた濃厚な甘味が流れていく。
あまりにも、深く、多すぎる快楽は、耐えきれない。
「はあ、あっ、あっ!
おかしくなっちゃ、ううう……っ!!」
それでも止めてくれない腰の動きが、怖くて。
塞がらない両の口から、ただ流れていってしまう。
「…っ」
最後、黒尾先輩も、私の中で果てる時に、優しく名前で呼んでくれたのが嬉しかった。
それでも私は、ただ怖かった。
結局、この人の、何にも触れることは出来なかった。
でも、あの声を聞いてしまうと、もうどうにも離れられなくて。
私が先輩のそういう相手として認識されたのが嬉しくて。
そしてそこから外されるのは、嫉妬や憎悪で狂いそうだった。
まるで、暗闇に潜む悪魔に魅了されてしまったようだ。