第6章 白昼夢幻想曲3(烏養繋心)
もう何ヵ月経ったのだろう。
あの消えようと思った日から、ずっと私のことを繋ぎ止めていてくれるこの人と一緒にいて。
毎日楽しいのとツラいのと苦しいのと、順番にぐるぐると私の中でもがいて、初めて知った恋の痛みを味わった。
「あの時から放っておけなかったし、これも、なんかの縁なんじゃねーの?」
「…?」
「だから、普通に……普通の、男女関係になるって、お前は考えらんねえの?」
ぶっきらぼうに、それでも真剣に、嘘みたいな言葉が並べられる。
「いいんですか……?」
「放っておけねえって、言ってんだろ」
何もかもが新鮮で、頭が追い付かない。
昨日まで一方通行すぎる想いで死にそうだったのに。
「返事は!」
「……はい…」
私は何かの呪縛から解き放たれたように、ふわふわとした心地よさになる。
揺蕩う煙を後ろめたい気持ちで見ることも、もうない。
「また泣くのか?」
「うん、嬉しい……」
繋がれた手の優しさが、いつもより染みた。
夜の帰り道、まるで夢見心地で帰路につく。
どうか、この長い白昼夢が終わりませんように……。
そう願わずにはいられなかった。