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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第5章 姫君の憂鬱(菅原孝支)


居心地よくて、長らく利用してしまった。
気分はすっかり悪女。
なのに、変わらず、私が言わないと指一本触ってこないこの王子には、呆れてすらいる。
そこが好きでもあるんだけど。
「菅原くん、えっちしよ」
「え…!」
「え、って何?やだ?」
「や、いいのかなって…」
「いいよ」
残念ながら今の私の城は、ぼろぼろの何もない和室。
ムードも何もないけれど、素朴なお布団で戯れるのも悪くなかった。
「じゃあ…」
遠慮深そうにしてくる不器用なキスが可愛い。
「菅原くんは、私のなんなの?」
「か、………彼氏」
「うん、そう。
だから、勝手にしていいんだよ?」
「ダメだ、ちゃんと確認してからでないと!」
「まどろっこしいなぁ…」
ぎこちない手で服を脱がせて、軽く畳んで置いてくれる。
「だって、さんだって、イヤだろ?
勝手に触られたりするの」
「痛くなければいいよ、別に。
あ、でも生理中は大変なことにな…」
「断れよ!!」
何故か唐突にぎゅっと、力強く抱き締められた。
月明かりに浮かぶ色素の薄い彼の姿は、青白く光っていて、童話の妖精や魔法使いが一瞬思い浮かんだ。
細いのにしっかり逞しい身体が、色っぽくてどきっとする。
幻想的な光景に、ほんの一瞬うっとりする。
「痛くしないのも、そういう日はしないのも、彼氏なら普通だし、言って欲しい……。
用心棒だったのに守れなかった、って、後悔するだろ…」
「心配してくれてありがとう…」
いつもより少し可愛く言ってあげると、肌越しに心臓が早くなるのを感じる。
(可愛い人…)
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