第37章 主よ甘き日々を終わりまで8(烏養繋心)
遅く帰っての私室を覗くと、彼女は制服のまま眠っていた。
そういえば居間の飯がそのままだった。
まだ食べてないなら一緒に食うかと起こした。
は飛び起きるという言葉がよく合うほど驚き、寂しそうな表情をする。
彼女かららしからぬ、冷たい
「なんですか」
という言葉に怒らせてしまったのかと少し焦った。
「や、寝てたから…悪ぃ」
あまりの迫力に思わず謝る。
本当に何をしてしまったのか検討が付かず、なんとか足り無い脳味噌を回す。
「べつに、いいんですけど…」
と俯いて言うがますます悲しそうで、せめて元気になるよう撫でようと手を伸ばすと、パチンという音を立てて払い除けられた。
本当に何をやらかしてしまったんだ、と、内心冷や汗が止まらない。
こんなになるまで何かを爆発させてしまった鈍い自分ならではの失態。
きっと我慢してただろうに何故気付けなかったのか。
なんとか平静を装って、
「め、メシ、用意したから。着替えたら来いよ」
と伝え、部屋を出ようとした。
出てからここ最近の自分の行動を振り返って何がアレだったのか考えようと思い、ドアに手をかける。
今にも泣きそうなか細い声が聞こえ、慌てて振り返った。
「ごめ、なさ……今日はご飯、食べられな…です…」
本人は気付いてないようだが、ぽろぽろと大粒の涙が流れ、スカートにシミを作っていく。
それを手で拭いながら、どういう理由のものなのか聞きたい。
「やっぱ具合悪いのか?」
昨日から変だぞと言いかけたところで、また手を払われる。
「触らないで…ください…!」
今日だけでこんな一変した態度を取られるのはやはり違和感があり、こちらも困惑してしまう。
昨夜はなんの問題もなかったはず。
「な、昨日までは…」
「だって…私、惨めで…」
そんな思いをさせてしまったのなら尚更理由を知って謝りたい。
こんなにも愛しい存在をここまで怒らせ、泣かせたのか。
続きを持つように黙っていた。
「他の女の人に、触った手で…私に触らないで……」