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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第36章 主よ甘き日々を終わりまで7(烏養繋心)


お出掛けから戻ってきてしばらく、あのずっと優しかった感覚が身体に残っていて、お腹が勝手に熱くなってしまっている。
私だけが好きで良かったのに、物足りなくなっていて……。
どうしたら好きになってもらえるか…ずっと…考えてしまっていて……。
そんなの、無理な話なのに……。
お店の掃除をしながらため息が出てしまった。
後ろからトントンと頭を優しく触れられ、振り返る。
背の高い繋心さんが、大丈夫か?と心配そうに見下ろしながら聞いてくれた。
「な、なんでもないです…!」
顔が一気に熱くなって見られないように慌てて視線を外した。
後ろから手を額に合わせ、
「熱はねえみたいだが…」
と静かに言われ、ドキドキと心臓がうるさくなっていく。
私の顔より大きな手が、そのまま私の髪を触り、もう一度優しく頭を撫で、肩を触れる。

夜のソレを思い出してしまって……。
お腹…ほんと…熱い……。

「ほんとに、大丈夫です…」
息をなんとか吸って、急いで答えた。
後ろからぎゅっと抱きしめられて、少しだけ煙のにおいがする。
「無理すんなよ」
「だ…大丈夫…です…」
なんでそんなに優しくしてくれるのか、聞きそうになる。
でも、私一人の勘違いかもしれない。
怖くて唇をきゅっと噛む。
「疲れてるなら、今日は先寝てろよ?」
「あ………」
気を遣ってくれているとは思うけれど、心のなかのどこかで、飽きられたのじゃないかとか、ソレでしか私のこと興味ないのにシないなんて言って本当に大丈夫か、とか……。
私には断る権利なんてないのに。
もしかしていじわるな質問をされている……?
「えっと…行きます…」
それでも恥ずかしくて目が合わせられない。
視線を合わせないまま静かに答えた。
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