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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第34章 主よ甘き日々を終わりまで5(烏養繋心)


近くにある美術館や記念館に立ち寄り、写真を撮ったりお土産を見たり、近くのカフェで名物を食べたりした。
すごく楽しくて時間があっという間だった。
すっかり夜になり、旅館へ足を運んだ。
初めての旅館はなんというか、やっぱり感動だった。
宿内の吹き抜けに竹藪があり、細い木の通路が庭に張り巡らされ、大きな池にたくさんの鯉がいてさらにそこに小さな橋がかかっていて、歴史の授業で見たお城みたいだった。
お部屋からは海と町が見える。
そして少ししたら、上手く言葉に出来ないほどのすごい料理がテーブルに並んでいた。
「…!!!」
「滅多に食えねえから味わえよー」
二人でいただきますを揃えて言って、初めて見る海鮮や綺麗に飾り付けられた食事を美味しくいただいた。
数ヶ月前まで、ご飯とおかゆと味噌汁を日毎ループで食べていた生活をしていただけに、あまりの満足さに涙が出そうだった。

人生初の温泉もずっと感動だった。
広い浴室に季節のお花や木が並び、日本庭園風の池に入るような露天風呂はとんでもなく気持ちよかった。
(満喫してしまった……)
もう既に出ていた繋心さんに、ごめんなさいと謝りながら近づくと、
「大分楽しんだみてえだな」
とくすくす笑われた。
「なんでわかるんですか…!?」
と聞くと冷たいもので頬を触られる。
びっくりして小さく悲鳴をあげてしまった。 
「それ飲んどけ、顔赤いぞ」
手渡されたものは牛乳の入った瓶だった。
「わ…美味しい…ありがとうございます」
そう言うと頭をガシガシと撫でられ、お部屋に戻ろうと言われた。
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