第29章 姫君の憂鬱5(菅原孝支)
さんが休んでいたのは、どうやら普通に体調を崩していたかららしい。
部屋に上がって、寝てるように促すと、謝りながら布団に潜る。
「病院は?てかご両親は?」
「……いるわけ、ない…病院も、行けてない……」
「え!?」
「た、たってられないもん…」
可哀想にたった一人、こんな弱ってる状態で家にいたらしい。
もう少し早く来てあげられたらよかった。
身体は熱いのに指先は冷えきっていて、寒気がするのか震えている。
こんな弱っている状態だというのに、この前の熱情は容赦なく襲ってくる。
どうしたらいいかわからなくて、とりあえず、何か温かい物を飲ませようと立ち上がった。
「待って…」
「っ!」
「もうちょっと、いて…」
「帰らないよ、お湯だけでも、飲みなよ」
「菅原くん、この前から…変」
「そんな、こと」
「私、なんかしちゃった?
この前のお出かけそんなに嫌だった?
振り回して嫌だった?」
何も言えない。
すぐに否定しなきゃと思うのに、こんなに悲しい思いをさせてたのかと思うと、声が出ない。
声が出せない代わりに、その、華奢な手を握る。
氷のように冷たい指先に鳥肌が立つ。