第3章 ジャンヌダルク2(及川徹)
それでも彼女といる毎日は普通に楽しく、頭のいい会話は気持ちよく、そして何より、たまに見せるツンツンとした態度以外の表情は可愛くて何よりの褒美だった。
部活が終わって皆帰ると、彼女は1人残って片付けと書類をまとめてから帰宅する。
俺はいつもそれを横で待った。
「さん、ここはー?」
「貴方先輩ですよね?なんで私が貴方の勉強を見ているんですか?」
「だって頭いいんだもん」
はあ、とため息をつきながらも、は教科書を一緒に見てくれる。
他に人がいるときより、二人の時の方が気が緩んでいるのがたまらなく想いが募っていく。
部室を出ると、大雨だった。
「うっわ」
「これは…」
「すぐ止むかな?」
「にわか雨でしょうから…。
自宅に連絡したらもう少し雨宿りしていきましょう」
外は雨雲でますます暗かった。
雷も近くなってくる。
ゴロゴロという音が徐々に聞こえてくる。
それが鳴ると、いつも気丈に振る舞っているが俺のスラックスをきゅっと握ってくる。
そして、涙目で、見上げてくる。
「せんぱい……」
彼女が見た目相応な言動をするのを見たのは、これで2回目だった。
「苦手なの?雷」
「すみません、高校生にもなって…大人になったら克服出来ると思っていたのですが……」
部室に戻って座りながらぽつぽつとが話した。
その小さな手は、俺の指をきゅっと握っている。
まるで小動物みたいなその反応に、萌えという二文字が交互に光って見えた。
「怖くなくなる方法、教えてあげよっか」
「そ、そんなのあるんですか!?」
キラキラした目を向けられて少しだけ罪悪感がつのる。
でもそれ以上に上回る、好奇心と嗜虐心。
雷が光ってが目を瞑った瞬間、悪い顔して舌なめずりをした。