第26章 蜂蜜レモネード7(影山end)
何をどうしたらいいかもわからず、さんはしばらく来なかった。
家に帰っているとしたら、及川さんには会えているのか。
それともすれ違っているのか。
ふと気になり、部活終わりに走って向かった。
及川さんち。
チャイムを押していいか悩んでいるうちに、
「影山くん!」
と驚いた声を掛けられる。
「あ、徹さんなら…、会えてないよ…」
「……そうっすか…」
やはりというべきか。
会わないよう時間をずらして帰宅したり、休みもすぐに出掛けているらしい。
逃げるように捨てて遠ざけて、こんな顔までさせて、いつもモノみたいに扱うくせに、慈しむように手厚く可愛がって…。
正直になれない及川さんに、さすがに腹が立った。
一発くらい殴らないと気が済まない。
辛うじて繋がっていた他の先輩に連絡し、及川さんの居場所を探った。
心当たりのあるところを上げてもらい、何日かかけて一通り回ったが、あまりにもあっさり、及川さんちの前で会えた。
「あ…」
「あ…」
逃げ出す及川さんの後ろを全力で走る。
「待って下さい!」
「絶対やだ!」
閑静な住宅街に、疾走の足音が響く。
「及川さん!!」
「ダメ!絶対!」
丁字路にあたり、及川さんが曲がろうとしたところで、ピタッと立ち止まった。
全力で走ってた自分もブレーキが間に合わず、及川さんの背中に突っ込んだ。
「ぐぬ!!」
「いてっ!!」
「きゃっ!?」
聞き覚えのある悲鳴は、さんだった。