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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第25章 白昼夢幻想曲5(烏養繋心)


分厚い幕が揺れる。
「…っ!!」
声を出さないように、それでも緩やかに訪れる絶頂は、抑えきれない。
「震えてんな…」
「…だ、だいじょう、ぶ。あっ…!」
「怖いか?」
首を横に振り、否定する。
「だいじょうぶ、だから、もっと…!」
恥ずかしげもなく、彼の腰に脚を絡めて密着を求める。
久々の重なりがあまりにも嬉しくて、頭がくらくらする。
泣きそうになるのを堪えると、また涙が一粒こぼれ、指先が震える。
「はぁあ、んぁっ、や…ぁ…!!」
打たれる楔に合わせて、我慢していた声が漏れる。
講堂に、反響しちゃうかな?と、頭の隅ではどこか冷静に考えてる。
はぁ、と吐息が白い。
火照ってわからないけれど、だいぶ寒いらしい。
「ああ…っ」
お腹の奥がぎゅっと熱くなる。
ひくんと、ナカに埋められた形が動く。
今日も交わりが終わるのが悲しくて仕方ない。
「ずっと、繋がってたい……」
「ふやける」
くく、と耳元で笑われながら、間違いないと正論を言われて、私も笑った。


小粒の雪がフロントガラスに反射してきらきら光る。
ちょっとだけ煙草臭い暖房は、さっきまでの余韻に浸らせてくれて、幸せなまま。
手の中の缶のホットココアは、甘い香りをより私の心に浸透させていく。
「私、やっぱり、弾くしかないんです。
もし、留学したら、帰ってくるまで待っててくれますか?」
不安で不安で仕方ない。
だって、カッコよくて、優しくて、大人で、でもたまに可愛くて、きっと他の女の人が放っておかない。
「こっちは行き遅れしてるんだ、安心しろぉー」
「……私より、可愛い女の子が告白したらどうするんですか?」
ぐいっと、腕を引かれ、バランスを崩した私がいつもより少し運転席に、彼の領域に入る。
缶の中身を溢さぬよう、ぎゅっと握る。
私の耳が丁度、彼の胸へあたる。
私と同じくらいの鼓動。
「お前以上に、好きになる奴なんて、いねえから」
「……ほんと…?」
「こういうの柄じゃねえ!おわり!」
「ええー!?」
赤くなった顔を横から覗きこんだ。
むっとされて、頭をくしゃくしゃにされた。
その大きな温かい手のひらに、応援された気がする。

「……うん、がんばってきます…」

帰宅して気付いた。
ブレザーのポケットには、イチゴ味の飴がいくつか入っていた。
今度はちゃんと食べられるかな、なんて、思った。

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