第24章 姫君の憂鬱3(菅原孝支)
「……なんか、あった?」
「っ!!」
さんは、本当に珍しく睨み付けた後、力いっぱい頬にビンタをしてきた。
「いっ!!?」
いつもマイペースで自分勝手で、けれど、唯一、怒っているところは未だに見たことがなかった。
が、理由も言われずにいきなり平手打ちは、さすがにこちらも腹が立つ。
「さん…せめて何に怒ってるか、言ってよ」
手首を掴むと、驚いた顔をする。
ムカついてたはずなのに、あまりにも綺麗で、つい見つめてしまった。
「…ごめんね……」
彼女はそのまま崩れ落ちるように膝を抱えて座ると、静かに泣いた。
「え!?」
「ごめんね、いろいろ、あって……つい……」
いつも1人でも平気そうにしているさんが、珍しく負の感情を全面にぶつけてきた。
強いなあ、なんて思っていたけれど、やっぱり、同い年の女の子なんだと、改めて思った。
「いいよ、そっち、行く」
「あ、ありがとう…!」
いつも来て当然という態度のくせに、嬉しそうにお礼を言われた。
珍しすぎて、呆然としてしまった。
夜8時を回っているというのに、言っても聞かないのでコンビニに寄らされる。
おおよそ、俺の月のお小遣いの半分近くを叩いて、彼女は籠いっぱいにお菓子とケーキと飲み物を買い、レジの横にあるホットフード全てを買い占めた。
半分以上を持たされ、のそのそと歩いて家に向かう。
その間も、何があったかは話してくれなかった。
ただ、じっと、言葉を待った。