第17章 常闇の彼方に堕ちていく(黒尾鉄郎)
お互いの息遣いが、すぐそこで聞こえる。
ぎゅっと力強く抱き締められれば、隙間なく身体が密着する。
その一つになってしまいたいという願いは叶わず、私は声を上げ続けるしか出来ない。
「いあぁっ!また、またいくっ…ぅぁあああっ!!」
「、愛してる」
また都合のいい夢を見せられているかのように、先輩が優しい。
いつもより、優しくて、約束通り、本当に愛されているかのように言葉を囁いてくれる。
「いい、っ、もっと、もっとぉ…!」
「愛してる」
顎を抑えられてのキス。
強引だけど、優しくて、好き。
目をつむり、ありったけの、その偽物の愛を注がれる。
きっと、端から見たら滑稽だけど、私が今幸せならそれでいいと、そんな風に思えた。
お風呂に入って、髪も顔も戻ってしまった。
一晩限りのシンデレラのような気分は醒めてしまって、また元の日常に戻るのかと思うと、少し寂しい。
それでも、まだ、黒尾先輩と関われるのは嬉しい。
きっと、次の好きな人が見つかるまで、こんな関係がずるずる続くんだろう。