第16章 蜂蜜レモネード(影山飛雄)
その時の部活のさんは、足元が既にフラフラで覚束無いように感じた。
クーラーボックスを持つ手は力なく、そのまま前に倒れていくのを慌てて抱き止めた。
「さん!?」
「……っ」
「しっかり…、大丈夫すか?」
「あ…、ん、だい、じょ…」
ふわふわした柔らかい身体と声、そして鼻を擽る女子らしい香りは、燻っている仄かな恋心に火を着けていく。
「さん、保健室行きましょ」
「…っ!」
さんは頑なにそれを拒否したが、無理やり肩に担いでカーテンの奥のベッドに寝かせた。
なんとなく、急がないとまずいと思った。
苦しそうに肩で呼吸し、震え、顔を赤くしていく。
「先生呼んできま…」
「ダメっ!」
「は?」
「そ、それは、だめ…絶対…!」
弱々しく手を握られ、呆気なく行動を制止させられた。
ベッド脇のパイプ椅子にへなへなと情けなく座らせられ、さんはツラそうに身悶える。
こんな時なのに煽られて、なんなんだと自分に腹が立ってくる。
どうすることも出来ずにその場にいると、細い腕が俺の短パンの裾を掴む。
「影山くん…っ、私、もう…」
「な…っ、ど、どうすれば…?」
「さわ、って…?」
「は!?」
さんは制服を投げ出すと、産まれたままの姿でベッドに臥せる。
腕を引かれ、誘導されるように、喉、胸元、腹に手が通される。
想像以上に白く美しい裸体は、大理石の彫刻のようで、それとは逆に触れると熱く、鼓動打ち、生きているんだと改めて思った。
「さん……」
綺麗だという素直過ぎる感想が恥ずかしくて、言い掛けて飲み込む。
赤い唇に指を添え、柔らかく撫でる。
「…もう…」
「ちょっ、う…」
もどかしく触る俺の手に舌を這わされ、ちゅうっと音を立てて指先を吸われる。
上下に舐める舌の感触があまりにも淫靡で、うっかりソレにされるかのような錯覚に陥った。