第8章 第七話
あの時の戦いが全力じゃあないんですよ?」
『!?』
にっ、と笑うと、エルアは息を整え、解号を唱えた。
「討ち滅ぼせ、百合神楽!!」
瞬間、短剣は双剣へと姿を変え、エルアはそれを構えるや地を蹴り、男に肉薄する。
「ぐっ?!貴様、どういう…?!」
エルアが斬りつけようとすると、男を丸い結界のようなものが覆うが、エルアは構わず斬りつける。
「今分かった…どうやら、いつかは何かしらの理由であなたらとは戦わなければならない、ってね。せっかくアンタいるんだし、丁度いい。今ここで、潰す!!!」
そう叫び、再び剣を振るうと結界のようなものは壊れ、砕け散った。
「あの男の防御魔法(ボルグ)をたった二撃で?!」
紫髪の男は驚きに目を見開いた。
「小…娘ェエッ!!」
「私の前にそんな薄っぺらいモンが通じるとでも?
形状変化!」
エルアは不敵な笑みを浮かべつつ、今度は自身の身の丈をゆうに越す細長い鎌、デスサイズを構える。
「はぁあああああ!!!」
エルアは思いっきりデスサイズを振り下ろすも、男はなんとか二枚目のボルグを作り出し、斬撃から逃れる。が、すぐに壊れ、吹き飛んだ。
「クソっ…小娘風情が……!」
壁にめり込む男を見下ろしつつ、エルアは言い放つ。
「小娘で結構。でもね、なんか知らないけど、そんな小娘のカンが言ってるんだ。アンタはこの世界にいちゃいけないってね。だから、これで終わりよ」
「あのお嬢さん…まさか……?」
紫髪の男がそう呟いた時だ。
「なん…だ?身体に力が入ら…ねぇ」
「!? ジュダル!」
ソロモンの知恵で墜落して気を失っていたジュダルが目を覚まし、なんとか立ち上がろうとしていた。
が、その姿は、とても弱っていた。
「マズい…!」
エルアがジュダルに気を取られた隙を突いて、男は黒い膜でジュダルを覆うと自身と共に浮上する。
「また会おう、マギ、そして小娘よ」
その言葉を残して男はその場から消えてしまった。
「なっ?!待て!ジュダルを返せ!!」
追おうとするも、二人は既に消えてしまっていなかった。