【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第5章 On ne vit que deux fois.
又それから数日――。
今日は小隊を組んで帝国軍を迎え撃つ事になっていた。
移動中の帝国軍を挟み撃ちにして物資を略奪する。
現代銃はいない。
特に難しい任務じゃなかった。
でも情報はガセで逆にこちらが待ち伏せされた。
通信端末からはケンタッキーが矢面に立ち帝国軍と交戦していると通信が入って以来音沙汰がない。スフィーがいるから大丈夫だと思うけど、心配だ。
「他人の心配をしてる場合か?」
そうだ。
こちらも結構まずい状況にある。
俺はベスくんと二人、先程から草むらに潜伏していた。帝国軍に追い散らされ、今この辺りにいるのは俺達だけ。
周りは林になっていて、帝国軍の歩兵が時々近くを通る。姿をくらます為に馬は捨ててここに身を潜めてから何分経ったのか?
数分の様にももう一刻は過ぎた様にも思える。
「どうする?このまま林の外まで逃げて馬捕まえて逃走する?」
馬は口笛を吹けば近くなら戻ってくるはずだ。
戻ってこなくても、味方に見つかってくれれば御の字。
「逃げる事を考えるな」
ベスくんは隙なく辺りを探りながら言う。
でも二人で迎え撃つにはちょっと人数が……。
マスターがいてくれたらちょっとは無理も出来るかもだけど、彼女は俺達の要だ。
作戦の決壊が伝わった時、すぐだけは敵の包囲網をカールとニコラ、ノエルが撹乱し街へ逃がした。
そうやって彼女から敵の目を逸らす内にこうやって散り散りになってしまったのだけど――。
さてどうしたものか。
「俺が囮になる。お前が撃て」
「えっ」
ベスくんがキッとこちらを見る。
「俺達は何だ?」
「貴銃士」
「貴銃士ならどうすべきだ?」
「……敵軍に踏み折られるまで戦う」
「そうだ」
がっと肩を掴まれる。
「絶対高貴が纏えなくてもその覚悟はあるだろう」