第4章 天泣
その時、来客を告げるインターホンが鳴った。
雅紀が来たんだ。
ロックも解除できる。
合い鍵も持っている。
……雅紀に、素直に伝えたいと思う。
もしも、俺が望むような言葉が聞けなくても。
自分の想いだけは伝えたい。
……それを伝えても、雅紀の気持ちを動かすことは出来ないかもしれない。
それでも…
たとえダメになるようなことになっても、俺たちはこれからもメンバーでいなければいけない。
………できるのかな?
雅紀に捨てられた俺は、あの人と並ぶ雅紀を…
幸せそうな顔を見ていることができるのか?
頭の中を、いろんな思いが渦巻いて、
もう可笑しくなりそうだった。
ガチャン…
鍵を開ける音がして、玄関ドアが開いたせいで、リビングのドアが微かに震えた。
俺は、ぎゅっと目を閉じて耳を塞いだ。
その時…
「ニノ…どうして、電気も付けないで…」
雅紀の声がした。
毎日、当たり前のように聞いていた優しい声。
俺の名を呼ぶ大好きな声…
怖くて顔があげられない俺は背中を丸めたまま、彼がゆっくりと俺に近付いてくる気配だけを感じていた。
その気配は俺のすぐ側まで来て止まった。
……なんで?
どうして黙っているの?
沈黙が…時間にしたら僅かなんだろうけど、俺にとっては永遠にさえ思えた。
雅紀は、膝を抱えて蹲ってる俺の前に座った。
見なくても分かるよ…
雅紀は小さく息を吐いた。
深呼吸?それとも、溜息??
「ニノ…顔を上げて…」
………嫌だ…
……イヤだ…
…いやだよ、雅紀…
俺…俺……
お前がいないとさ…
不意に、ふわりと雅紀が俺を包み込んだ。
……雅紀…
「ニノ、ごめんね…」
俺の背中をそっと抱き寄せたまま、
雅紀はそう言った。
その声は、ほんの少しだけ震えてた。
………そのごめんは…どっちのごめん??