第4章 天泣
【雅紀】
玄関のドアを開くと、中は真っ暗だった。
もしかして、出掛けちゃった!?
慌てて靴を脱ぐと、綺麗に揃えられたニノの靴が目に入る。
なんだ、いるじゃん…
でも、どうして…?
電気も点けないで…
電気を点けようとスイッチを手探りで探して。
指先に触れたそれを押そうとした。
でも…
なんとなく、点けちゃいけない気がして。
結局スイッチを押すことなく、俺は壁伝いにリビングを目指した。
リビングのドアを開くと、カーテンの開け放たれた大きな窓から、仄かな月明かりが差し込んでいて。
それにぼんやりと照らされたリビングの片隅に、ニノが膝を抱え、その膝に顔を押し当てて、蹲っていた。
「ニノ…どうして、電気も付けないで…」
声を掛けても、顔を上げてくれない。
しばらく様子を窺ってたけど、ニノが動く気配はなくて。
俺はゆっくりと傍へ近付いた。
「ニノ…顔を上げて…」
すぐ傍で声を掛けても、ピクリとも動かない。
この部屋を包む暗闇が、まるでニノの心の中を表してるみたいで…
そうしたのは
紛れもなく俺なんだ
本当は
もうニノに触れる資格なんて俺にはないのかもしれない
でも…
それでも、俺は…
「ニノ、ごめんね…」
俺はそっと手を伸ばして、小さくなってる体を抱き寄せた。
抵抗するかと思ったけど、ニノは俺に為されるがまま、俺の腕の中にすっぽりと収まった。
「ごめんね…不安にさせて、ごめん…」
でも、ニノからなんらかの意思表示はなくて。
ただ、俺に黙って抱き締められてるだけ。
きっと
俺の言葉を待ってるんだ