第4章 天泣
【和也】
雅紀から電話が来た。
『今から来る』って…
『会いたい』って……
なんだろ?
何で急に…
俺を避けるような、逃げるような姿ばかりだったのに…
話があるの?
何の話?
まさか、電話口であんな切羽詰まった様子だったのに、世間話ってことはないだろう…
だったら…
ひとつしかない。
翔ちゃんの事…
浮気を認めて土下座する?もう二度としないから、って…そう頭を下げて許しを請う?
それとも……
それとも、その逆だったら??
やっと欲しいものが手に入ったから、もう俺はいらない…
本当に好きだったのは、翔ちゃんだから…
そう言われたら…
……俺、どうすればいいの?
……どうなっちゃうんだろう…?
考えたら怖くて…
良くない結末ばかりが頭の中に広がって来て。
俺は、部屋の隅に蹲って膝を抱えた。
そうしなきゃ…
そうしていなきゃ、身体が震えてどうしようもなかったんだ。
怖くて…不安で…
雅紀に会いたいけど、顔を見たいと思うけど、
彼が、今からいったいどんな言葉を紡ぐのか?
そう思うといてもたってもいられなくて。
俺は部屋の電気を消して、目を閉じた。
カーテンを閉めていない大きな窓から、月明かりが差し込んでくる。
雅紀……
俺、いつの間にか、こんなにお前の事…
俺の中、
いつの間にかお前でいっぱいになってた…
付き合いだしたころは戸惑いが大きかった。
『俺、翔ちゃんのかわり?』
でも、雅紀はそんな俺の不安をあっという間に吹き飛ばす勢いで、どんどん俺の中に入って来た。
俺の心の中にも、生活の中にも、
遠慮なくずんずん入り込んで来て…
それまで、人をそこまで近づけたことがない、近づけようとしなかった俺にとって、
初めて心の奥まで入って来て抱き締めてくれた人…
雅紀……
お前といる時だけが、
俺は俺でいられたんだ…