第4章 天泣
「良かった…返信ないからさ…」
いつもの、トーン。
「突然来て、ごめんね?」
いつもの、潤だ。
そう、思うのに。
「智?どうかした?もしかして、具合悪い?」
慌てたような足音がして、強く肩を掴まれた。
「ねぇ、どうしたの!?」
視界にいきなり入ってきた、心配そうな顔。
「…智…?」
ゆっくり、顔を上げた。
真っ直ぐに、大好きな意思の強い瞳を見つめる。
「え…?なに…?」
いつもは真っ直ぐに見つめ返してくる瞳が、不安げにゆらりと揺れた。
どうして、動揺するの…?
「熱は…ないみたいだけど…」
おでこに触れた、手。
その温かさに、涙が出そうになった。
いやだ…
聞きたく、ない…
「智?本当にどうしたの?」
ねぇ…
嘘だって、そう言ってね…?
お願い、だから…
俺を
騙しきって
「さっき、ね…斗真に、誘われて…」
押し出した声は、みっともなく震えてた。
「え?あ~、あいつ、無茶な飲ませ方したんだろ~っ!ったく…今度シメとかなきゃ!俺の大野さんにさぁ…」
「健くんも、いたんだ」
被せるようにそう言うと、勢いよかった声が、プツリと途切れた。
「え…?」
「お尻…触られて…食べたいって…この間は、松潤に食べさせたからって…」
間近で、息を呑む音が聞こえる。
「食べさせたって…なに?それ、美味しかったの?」
笑顔で訊ねると、表情が凍り付いた。
それが全ての答え
「ち、違うんだっ!それはさ…」
靄がかかっていたようにぼんやりとしていた頭が、急速に冷えていく。
「そのっ…俺、酔っててよく覚えてなくてっ…」
ねぇ、いつもの潤らしくないよ
そんな言い訳
みっともない
「信じて!智っ…」
再び肩を掴んできた手を、思いっきり振り払った。
「触んなよ」
潤の瞳が、大きく見開かれる。
なによりも大好きだった、瞳
「二度と…俺に触るな」