第4章 天泣
【和也】
………雅紀の相手が分かった。
浮気相手……
浮気?
…だよな?
でも…
今日はその人と二人の仕事だった。
テレビ誌の取材と撮影。
俺がギリギリに現場に着くと、
「おはよ~、ニノ」
その人は爽やかな笑顔で俺を迎えた。
「おはよ…早いね?」
「そう?道が空いてたからかな~?」
そう言ってまた、ニッコリと目を細めた。
……雅紀の相手…
櫻井翔………
あの夜、雅紀の首筋にほんの微かに残った香り、
それはいつも翔ちゃんが着けている香水だった。
他にもつけてるやついるだろうし、
勘違いかもしれない…そう思ったけど…
そう思おうとしたけど…
だけど。
彼だと思うと…
雅紀の相手が翔ちゃんだって思うと、色んな疑問が、残酷だけどクリアになっていく…
俺とこういう関係になる前…
雅紀は翔ちゃんが好きだった。
嵐としてデビューする前、ジュニア時代から、
雅紀は翔ちゃんに憧れてた。
レッスンの帰りとか、いつも『翔くん、カッコいいよね~』って…
今日はこんな服着てたとか、
髪型変わってたとか、
ピアス開けてたとか…
「ねえ~、今日の翔くん、目の色、変だったよね~?」
「あ~、あれ、カラコンだろ?」
「カラコン?そっか~?それであんな薄茶だったんだ~…なんか、あの目で見られると、ドキドキするよね~」
電車の中、バカみたいにはしゃぐ雅紀…
たくさんいるジュニアの中で、当時、翔ちゃんの存在はちょっと異質だった。
いい意味でがっついてない、っていうか…
どこか少し引いているような、斜に見ているような。
少しでも目立ちたい!
ってみんなが躍起になってる中で、翔ちゃんはなんか、余裕だった。
俺も、どちらかというと目立ちたくない方だったから、そんな翔ちゃんとは不思議と気も合った。
雅紀や潤なんかと組まされることが多いけど、
そう言うんじゃないところでは、話すことが多くなっていった。
始めは俺より小さかった翔ちゃんは、
ホントに可愛かった…