第4章 天泣
逃げているばかりじゃいけないって、漸く決心した俺は、大野さんにLINEをした。
読んでくれるかどうか分からないけど。
それでもいいって…
もしも家にいなかったら、帰って来るまで待っていようと…
『今からそっち、行きます』
そう送った。
既読は付かなかったけど、それも想定内。
すれ違ってしまった気持ちを取り戻すため、俺は車のエンジンを掛けた。
明日は確か、俺も大野さんもオフだ。
夜の10時を回った深夜の都内は、車の台数も少なくなって来てるから、彼のマンションには15分ほどで着いた。
いつもの駐車場に停めて、マスターキーでロックを解除しエレベーターのボタンを押した。
幸いエントランスには誰もいない。
コンシェルジュも、敢えて声を掛けてこない。
その辺は彼等もわきまえてるんだ。
携帯をもう一度確認すると、レスはないけど既読になっていた。
いる!
大野さんは部屋にいる…
そう確信した俺は、エレベーターが来るまでのわずかな時間、階数を知らせるランプを見上げて小さく息を吐いた。
……大野さん…智…
どうか、俺の事もう一度ちゃんと見て。
不安だった気持ち…
上手く説明できなかったモヤモヤも、ちゃんと話すから…
意地を張らずに、ちゃんと『あなたが好きだ』って伝えるから…
『愛してるから離れたくない』って、届くまで何度だって伝えるから…
だから……
その時、エレベーターが付いた。
いつになく気負って乗り込んだ俺は、知らなかった。
彼が、俺が闇に葬ろうとしてた一夜のことを知っているということを…
その事実を知った彼が、
深く深く傷ついているということを…
……一度ずれてしまった歯車は、
もう元には戻らないと言う事も…