第4章 天泣
【潤】
このままじゃいけないって分かってる。
目が合いそうになると慌てて反らすの、大野さんはちゃんと気付いてる。
なんなら、他のメンバーも俺と大野さんの様子がおかしいって思ってる。
………どうしたらいい?
この先、俺はどうしたらいいんだ?
選択肢は3つ。
一つ目は、大野さんとは別れて、元のメンバーの関係に戻る。
もう一つは、俺の気持ちと一緒に、健くんとのことも話して、それでも別れたくないって言う。
最後は、健くんとのことは絶対にバレないようにして、今までの関係を続ける努力をしていく。
……別れる?
そんなことは出来ない…少なくとも、今の俺には考えられない…大野さんがいなくなったら…
考えるだけで怖くて体が震えてくる。
だったら…
もう答えは決まってるじゃん。
このまま、彼と恋人同士でいる。
そのために、どうするのが正解なのか??
……
………大野さんには、話さない…
健くんだって、『酔った勢いで、よく覚えていない』って、そう思えばいい、って言ってたじゃん…
実際俺、すげー酔ってたし。
強ち嘘でもない…
もしもバレるようなことがあっても、健くん家には泊まったけど、全然覚えていないって…
そう言い通うせばいい…
たった一回きり…なんだし…
心がそこにあった訳じゃないんだから。
俺は自分の中で、必要かどうかもわからない言い訳を、あれこれと考えていた。
自分を正当化するための…
自分だけを守るための…
最低な言い訳を…
それでも…
そんな汚いことをしても、大野さんを…
智を手放したくない。
彼が、俺以外の誰かのものになるなんて、想像しただけで胸が潰れそうになるんだ…
好きだから…
愛してるから、俺は嘘を吐く。
何よりも失いたくないから…
付き合い始めた頃の気持ちを、もう一度思い出して…
やり直したい…