第4章 天泣
次の日。
斗真に呼び出されて、俺は居酒屋へと向かった。
いつもなら絶対断るんだけど、なんとなく一人でいる気分じゃなくて。
…潤とも、会いたくなくて。
なんとなく、誘いに乗っかってしまった。
「大野くんが来てくれるなんて貴重だよ!ありがと~!」
店に入るといきなりハグされて、来ちゃったことを後悔した。
もう、酔っ払ってるし…
個室の中には数人の後輩と。
「お~!大野!久しぶりじゃん!」
珍しい顔がいた。
「健くん、久しぶり」
最近ご無沙汰だった顔に、思わず笑みが零れる。
「元気だった~?相変わらず黒いなぁ!怒られないの?それ」
「あ~、もう事務所も諦めてるんじゃない?」
なんとなく健くんの隣に腰を下ろした。
「じゃあ、天然記念物の大野くんが来たって事で…カンパ~イ!」
「ヒドいな…」
文句を言いつつも、久しぶりの再会に心が弾んだのも事実で。
しょっちゅうは嫌だけど、たまになら楽しいかも。
俺は一瞬頭に浮かんだ潤の顔を、隅に追いやった。
「ちょっとトイレ」
楽しい雰囲気に酒はハイペースで進み、だいぶ酔いが回ってきて。
トイレに行こうと立ち上がった瞬間、ぐらりと世界が揺れた。
「あぶねっ!」
咄嗟に隣の健くんが支えてくれる。
「大丈夫かぁ~?」
「ごめん、大丈夫…」
体勢を立て直そうとしたとき。
いきなりお尻を鷲掴みにされた。
「ひゃっ…」
「いいケツしてんなぁ、大野。ここの具合も試してみたいわぁ」
言いながら、後ろの穴をするりと撫でられる。
「ちょっと、やめてよっ…」
「健くん、今度は大野くんがターゲットなの~?」
すっかり出来上がった斗真が、いやらしい笑いを浮かべながら俺を見てる。
「ターゲットって…!」
「嵐、全員食べちゃわないでよ~?」
…え?
「ふふっ…どうしよっかなぁ?松潤には食べさせてやったけど、大野は食べてみたいなぁ…」
…松潤に…食べさせた…?
それって…まさか…
「健くん、そっち側もいけんの~?すげー!」
斗真の楽しそうな声が響く中。
俺はギラギラ輝く肉食獣のような健くんの目を、呆然と見つめていた。