第4章 天泣
どの位の間だろう?
いい訳や謝罪の言葉を吐くこともなく泣き続けた雅紀は、そのまま眠ってしまった。
あ~あ…こんな顔して///
明日、ロケ行くんだろう?目が腫れたらどうすんだよ…
俺は彼の身体をソファーに寝かせて、タオルを絞ってきた。
ぐちゃぐちゃの顔をそっと拭いて、泣き過ぎて赤く腫れた瞼にタオルを乗せた。
……雅紀…お前、どうしちゃったんだよ?
俺の事…あんなに大事にしててくれたじゃん。
いつも俺のこと一番に考えてさ。
あんなに、愛してくれてたじゃん?
それは嘘じゃないよな?
そんなに簡単に心変わりするなんて…
理由があったんだろう~?
拒みきれなかった訳が…
流石にベッドまでは運べそうもないから、
寝室からタオルケットを持ってきた。
デニムがきつそうだから、腰のボタンを外してやった。
すると、
「ん~んっ…にのぉ~…好き…」
寝言でそう言いながら、雅紀が抱きついてきた。
なんだよ、もう…好きじゃん!俺の事…
寝ててもちゃんと、俺の事夢に見てる…
………
……え…?
……嘘だろ…??
これって……
この匂いって……
しがみ付かれた雅紀の首筋…
微かに香る残り香…
さっきは気付かなかったくらいに、
ほのかに、僅かに香るだけの…
でも俺は、その匂いに心当たりがあった。
まあ、そんなに珍しい香水でもないから、
他のヤツが付けてることもあり得るけど…
でも……
雅紀の相手が、彼だと思うと、
色んなことが見えてくる…
辻褄が合わないと思っていたことが、
怖いくらいに繋がってくる…
まさか……
一番あり得ない人の顔が、俺の中ではっきりしてくる。
……雅紀…
間違いだよな?
雅紀……
目を開けて、
『そんな訳ない』
そう言ってくれよ///
頼むから//////
俺は、掛けてやろうと思ったタオルケットを握りしめたまま、息をするのも忘れて、立ち尽くしていた。